母子絵の代表的な場面、授乳を描いている。美人の側に意味なく子どもを配した
母子絵とちがい、母がいかにも女房らしく描かれている。この揃物では、他に
「屋敷風」「妾風」などが知られ、また歌麿には類似の揃物として「当世女風俗通」
（寛政後期）がある。

母が豊かな乳房を子どもに含ませている。女房風とあるように、母はきちんと眉を
落とし、お歯黒にしている。髪・かんざしも、飾り気が少なく、細ひもで絞めてある。
気がかりなのは、幼児の目線である。母ではなく、画面正面の外をじっと見ている。
父親を見る親し気な目つきではない。だれだろう。

生活感ある母子絵であり、授乳風景である。