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新板娘庭訓出世双六/新板娘庭訓出世雙六
シンパンムスメテイキンシュッセスゴロク
作者名
英泉 (渓斎 英泉)
作者名ヨミ
エイセン (ケイサイ エイセン)
代表明細・シリーズ名称
新板娘庭訓出世双六
落款等備考
東都 渓斎英泉画
制作者備考
和泉屋市兵衛
印章等
印章注記
時代区分
弘化頃
西暦
1844-1848
形態
大判2枚貼
種別1
木版浮世絵
種別2
錦絵
種別3
内容1
絵双六 出世
内容2
ゲーム絵 教訓
内容3
女子 女性 生涯 職業 双六
追加情報
テーマ
具体物
位置付け
画中の文字・文章
備考
「娘庭訓」とあるように、家庭で親が娘に教えなければならない教訓をのべ、女性の出世の道を説いた双六である。「ふり出し」のところに「幼きときは、白き糸のごとし、ものに染まりて次第に色々になる。ふり出しを慎しむべし」とあり、少女期の家庭教育の重要性を強調している。よき花嫁、女房になるか、御殿務めが出世とされている。
「ふり出し、おどり小娘」とあり、ここで「一」がでると「きむすめ」に進み、続いて「一」だと「花嫁」、ここで「三」だと「手習師匠」になり、「四」で「御局」に出世する。「ふり出し」で「二」だと「おてんば娘」で、ここで「一」が出ると「飯盛り女」、次に「六」なら「はっち(乞食坊主)」に落ちる。「上り」は、裕富な家庭の「極楽隠居」で、おおくの女性たちにかしずかれている。その左右の枡目は、御殿仕えの「御局」「お中老」「お召し使い」と、上流商家の妻「御新造」となっている。
江戸時代の女性に対する教訓と同時に、当時の女性の職業に対する評価を見ることができる。
新板娘庭訓出世雙六
*振り出しと上がりを除き、下段右より上段への順に翻字。
東都 渓斎英泉画
江戸芝神明前三島町
和泉屋市兵衛板
【一段目】
○ふりだし おどり子娘
①きむすめ ②おてんば娘
③花よめ ④女房
⑤めかけ ⑥おめしつかひ
人うまれてをさなきときは、おやのそだてにありといへとも、たとへていへば、白きいとのごとし。ものにそまりしだいにて、いろ になることゆゑ、うか とはせましきなり。一代のふりだしをつゝしむべし。
○子もり
②火たきぼうこうのおさんどん
④いつかてゝなし子をうんで、おうばどん
⑥しとやかもので、おすゑ
○めかけ
②しあはせよく女房
④川だちは川でやりて
⑥こゝろだてがよくてごしんぞ
○おてんば娘
①そだちがわるくてめしもり女
③はすはものゆゑ、茶やをんな
⑤きりやうのぞみでめかけ
○茶屋をんな
②みもちあしければ、たこくへいつてめしもり
④はたらきをはなにかけて山のかみ
⑥としとりてやりて
○中ばたらき
②こぼんなうゆゑ、子もりになる
④ふしあはせ、ふうふわかれでおんば
⑥さうおうなところへ女房
○とりあげ
②とりあげがとしよりすぎてはつち
④口やかましいしうとめ
⑥金をためてはりいしや
【二段目】
○きむすめ
①きりやうのぞみで花よめ
②よき人の目にかゝりおめしつかひ
⑤よきゑんだんで女房
○花よめ
①いつかしうとめ
③としとつて手ならひしせう
⑤りはつものゆへごしんぞ
○やり手
②心がけあしく、はつち とあるく
④かゝる子もなく、のりや
⑥ていしゆをおいどの下にしいて山のかみ
○のりうり
①こしがまがつて、ばつち
③ゐんがにや、めがつぶれてごぜ
⑤人に貰た子がりつしんして、おもひがけなくらくゐんきよ
○ごぜ
このところにはでることならず。めがふじゆうで、りやうぢきんをつかれ、おどり子かへり、あらたにふりたしでなをし。
○しうとめ
①よめやむすこをいびり出してはつち
③ぞんきものむぢひでとりあげ
⑤こゝろだてよく、らくゐんきよ
○女房
①りやうけんちがひのふしまつではつち
③おとなしきうまれゆへ、ごしんぞ
⑤げいゆへにごけになつて、手習ひしせう
○おすゑ
①ほうこうのむかしこひしき、山のかみ
③どういふいんねんでか、ちや屋をんな
⑤おめにとまつてすぐに中ろう
【三段目】
○おうばどん
②たび のさんになれて、とりあげ
④のりや、
⑥子をたいせつにして、ごしんぞになる
○やまのかみ
②女のくせに大酒のみ、さけのうへわるく、のちはばつちぼうず
④ていしゆとてん かせぎ、とりあげ
⑥きちがひじみたかんしやくもち、てうどやりてにもつてこい
○はりいしや
①わかいときからみもちがわるく、のりや、
③てならひしせう
⑤あまいははつちぼうず
○はつち
このところはでることならず、ゐすはりなり。されどもしまひには、そだてたむすめがしゆつせして、らくゐんきよさまよりこうりよくをうける。
○手習師匠
②はりいしやにはましだが、おはりさん
④おつぼねほうこう
⑥ちやのみともだちの女房
○めしもり女
②としよつて、やりて
④そうどくで、ごぜとなる
⑥こゝろがけがわるくはつち
○おはり
①ふしあはせで、はつちぼうず
③こゝろだてがわるくて、やりて
⑤山のかみのくされゑん
○おさん
②りちぎゆへ、なかばたらき
④てゝなしごで、おうばどんにでる
⑥うぢなくて玉のこしのごしんぞ
【四段目】
○おつぼね
①おつぼねをさがり、手ならひしせう
③しあはせわるく、のりや
⑤人からもかくべつ二度めのごしんぞ
○御しんぞう
①しうとめ
②はつち
③らくゐんきよ
④おはりさん
⑤はりいしや
⑥のりうり
○お中老
①しゆびよくおいとまをいたゞき、おいしやさまへ花よめ
②出世しておつぼね
⑤ごしんぞ
⑥らくゐんきよ
○おめしつかひ
②としひさしくつとめて、おつぼね
④こゝろだてがわるくつて、はつちぼうず
⑥よいお子をもつて、らくゐんきよ
○上り
万福長者極楽隠居
(小泉吉永氏翻刻)
遊び方「飛び双六」、ただし「ごぜ」「はっち」に来ると「でることならず」となる。
・現在では分かりにくい職業。「中ばたらき」→奥女中と下女の間で雑用をする女中。「とりあげ」→産婆。「やり手」→遊女のめんどうを見る女性。「ごぜ」→盲目の門付女性。「おすえ」→下女。「おうばどん」→乳母。「やまのかみ」→口うるさい妻。「はりいしゃ」→鍼医者。「はっち」→鉢坊主、乞食坊主。「めしもり女」→宿屋の非公認遊女。「おはり」→針仕事をする女性。「おさん」→台所仕事をする女中。
・女性が心がけ次第で幸、不幸、さまざまな一生を送るように、たくみに構成されているが、この双六にはお手本がる。それは「新販女庭訓振分双六」(東西菴南北作、勝川春扇画、若狭屋姉版)で、判形、内容構成、台詞ともほぼ同一である。ただ各枡目の絵が春扇の作品では女性の大首絵になっている。春扇は文政3年頃に春好二代をついでおり、この作品はそれ以前の作である。
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