絵に添えた歌に
「君がため　をしからざりし　いのちさへ　ながくもがなと　おもひけるかな」
（『別本和漢兼作集』巻第八　右近少将義孝）とある。
本来は恋人に呼びかけた歌だが、ここでは子に対する母の想いである。

母は豪華な檜扇文様の打掛を着ているが、かんざしで分かるように遊女である。
禿に子どもをおんぶさせようとしているが、右手に持っているのは花かんざしだ
ろうか。そばには梅の枝を書描いた羽子板と、三枚羽の羽子があり、右手には
大箱提灯を置いてある。羽子板があり、季節は正月。

母の子への想いを、身分をこえて描いている。

君かため
おしからさりし
いのちさへ
なかくもかなと
おもひけるかな