「今すがた」は、美人大首絵の流れをくむ美人画であり、昇雲の美人画の代表作でもある。年令も少女から母親までさまざまで、母子絵もある。全体に日本情緒豊かな美人画であるが、なかには洋装美人もおり、明治らしいモダンさも感じられる。画面外枠に、風景などを描いた作品、白地のままのものがある。全体で５０枚を越す揃物で、人気のあったことがうかがえる。彫り摺りとも微妙な線描、色調をよく理解している。公文では少女や母子絵を所蔵。

「ヲゝこわ」とあり、恐ろし気な狐の面をかぶった男の子が、手を丸めて握り、狐になりきって「こんこん」と母に迫っている。品のよい顔つきの母は、絣の袂（たもと）で防ぎながら「おおこわ」と怖がって見せている。この白狐の面は、稲荷神社で初午などの祭りの際に子どもの遊び用に売り出されるもので、白狐は稲荷神のお使いとされた。子どもの着物には、白い蕪を散らしてある。母子の微笑ましい情景だ。

明治期の美人大首絵の代表作。明治期のさまざまな年令、職業の衣装、髪型など、風俗がよくとらえれられている。