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武芸立身舘双六/ 武藝立身舘雙六 ブゲイリッシンヤカタスゴロク

武芸立身舘双六/ 武藝立身舘雙六 

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作者名 三代 豊国 (一陽斎 豊国/三代 歌川 豊国)・万亭 應賀/万亭 応賀)
作者名ヨミ 3ダイ トヨクニ (イチヨウサイ トヨクニ/3ダイ ウタガワ トヨクニ)・マンテイ オウガ/マンテイ オウガ
代表明細・シリーズ名称 武芸立身舘双六
落款等備考 一陽斎豊國画・万亭應賀作
制作者備考 上州屋重蔵
印章等
印章注記 改印名主一印「渡」
時代区分 弘化頃
西暦 1844-1848
形態
種別1 木版浮世絵
種別2 錦絵
種別3
内容1 絵双六 出世
内容2 ゲーム絵 けいこ事 修業
内容3 双六 武芸 学芸 遊芸 立身 打鞠 手習い 算盤 生花 茶の湯 将棋 天文

追加情報

「武芸立身」と表題にあるように、武士の立身出世に必要な武術、学芸を扱っており、いわば文武両道を説いている。
このような出世双六が登場した背景には、幕末になり幕藩体制がゆらぐとともに、旧来の家柄にとらわれずに実力ある者を起用せざるを得なくなったことがある。しかし作者は、棒振で「べらぼう二本」とか鎗術で「まずうそをつく」とか、しゃれとユーモアを利かしている。
ふり出しは「稽古ふりはじめ」で、剣術道場のけいこ風景、両側は武者修行に出かける若者と子連れの浪人である。二段目から三段目にかけては、花、茶、香、謡などいわゆる遊芸であり、今では女性のたしなみになっているものが多い。棒振以降は武術中心だが、その間に天文、軍学、儒道、算盤、しつけを配してあり、立身には幅広い教養、知識が必要なことがうかがえる。「上り」は殿様から「御褒美」をいただく場面で、上位の役職に取り立てられたのであろう。その両側は「手跡」と「検術」で、文武の代表である。
絵双六には早くから出世双六が見られるが、日吉丸、義経など著名武将の一代記であった。本品は幕末に出現した武士としての出世コースを示すもので、明治になってからの四民平等による立身出世との中間に位置する出世双六として貴重。
武芸立身館双六*振り出しと上がりを除き、下段から上段まで、各段右より順に翻字した。
【一段目】
万亭応賀作 一陽斎豊国画
○稽古ふりはじめ
①碁 ②生ばな ③茶の湯 ④狂げん ⑤十
種香 ⑥将棊
○武者修行
○こゝへ来れば下まはり(休)
①をふれば剱じゆつ
「あれに見へるつぢだうへはいつて夜をあかそうか。しかし、むさしぎやうと六ぶヶつぢだうへはいるのは、もう、ふるめかしいな」
○浪人
こゝへおつれば下まはり(休)
をふれば、本家へ立もどり、上り
「今からやつて身をしのんでいれど、だいぐわんじやうじゆ(大願成就)すると、もとのぶしにたちかへり、いまのなんぎをむかしばなしにするぞよ」
【二段目】
○碁所
①しやうぎ ③ちやのゆ ⑤ぼうつかひ
「まて  、そこであそこのみちをきると、そこでいたちのみちがふさがると、せつなべでくさくつていけまいなぁ」
○生花
②十しゆかう ④うたよみ ⑥きやうげん
「さかうたいけばなといふものは、一としほいゝもんでござへます。しかし、みづばなも一としほがあつていゝもんでございますな」
○茶の湯
①うたひ ⑤いけばな ⑥ごうち
「このやうに、まいにち世のなかをちやにしてくらせど、みそかにおつかない、かけ鳥といふとりがとびこむのをかんがへては、ちやにしてはゐられぬ」
○狂言
③けまり ④うたよみ ⑤うたひ
「さるにさへうかれてなにかをやつてしまへば、女らにうかれて、ときにはかどやきぢめんはもちろんの事だ」
○十種香
①けまり ③ぼうつかひ ⑥きしや
「さぁ  、げんじかうをやめてこれから、女どもをあいてにかくれんぼをいたそうぞ。みな、こい  」
○将棊
③だきう ④碁 ⑥むしやしゆぎやう
「なんのかないもせぬのに」
「いえさ、けいこは四つまへだよ。ちとおいでと、いつたらさ、えへん  」
【三段目】
○歌詠
②すまふ ③てんもん ④いけばな
「いえ、もふうたのとくには、きじんのこゝろが、とうふやのむすめのよふにやわらかになり舛」
○謡
①きうじゆつ ⑤およぎ ⑥だきう
「これはしたり。くちからはいがとびこんで、はなのあなからとほりぬけをいたしました」
○蹴鞠
③なぎなた ④しつけがた ⑤らう人
「いつのころから、やなぎにけまりといつたか。なにもやなぎのそばでなければ、まりがはらをたつといふわけもあるまいに。これから松にしてやらう」
○棒振(ぼうつかい)
①てつぽう ②しやうぎ ③武者しゆぎやう
「そも  ぼうのはじまりは、うへのにごほんぼう、わたしはべらぼう二本ぼう、さるぼう、くろんぼう。これじやぁ、まめぞうのやうだ」
○打毬
④やわら ⑤きやうげん ⑥すまふ
「はいよ、   、   、そらあかゞはいつた、  
   。しろはいくじがないの。なんとこんなにあかゞいつたの、しろだのといふのは犬がつるむやうだ」
○角力
①らう人 ②ぼうつかひ ⑥てつぽう
「いや、まだ  、たとへをんなにはなげられるとも、おめへたちにはまけられぬ。それ  、どつこいそうはいかぬ。いや、これはのさ」
【四段目】
○長刀
①ちやのゆ ③十しゆかう ⑤そろばん
「なんでも、なぎなたは、みづくるまにまさねへことだ。もし、みづぐるまにまはすと、とももりのやうに、うみへとびこんでしまふやうなことがしゆつたいする」
○鉄炮
③うたよみ ④がくもん ⑥ぐんがく
「いやもう、おまへはうそのてつぽうをよくおつきなさるさうだ」
○天文
①けまり ⑤けんじゆつ ⑥なぎなた
「いや、これは金銀星があらはれたれば、きん  がいまにふるであらう。さつそく、てつではつたからかさをこしらへておかなけりやならぬ」
○弓術
③手ならひ ⑤すまふ ⑥てんもん
「いえ、もうごどうぜんに、かたがはんぶんくろくなるにはおそれいります」
○軍学
①うたひ ⑤武しやしゆぎやう ⑥だきう
「ときにせんせい、このやうによろひかぶとをきましたばかりで、ろくに手あしがはたらけぬに、このうへ、かけたり、むまにのるのはめいわくなことでございますな」
○游(およぎ)
③きうじゆつ ④がくもん ⑤やりつかひ
「それ、  なんとかいつたうたに「みづとりのあしにひまなき」といふこゝろもちと、おいらがかうやつてゆくのとおなし事た」
【五段目】
○騎射
②てんもん ④ぐんがく ⑥そろばん
「ゆんべけりして、こしがふらついて、どうもすはらぬ。はいよ、  、  、  。どうだ、あなのあるものなら、はづしこはない」
○儒道(がくもん)
④そうじゆつ ⑤手ならひ ⑥やはら
「だいがくふきしやう  、していしのいわく…」
「あぁ、よくおぼへた、  。さぁ、はやくかへつて、たこでも、こまでもまはすがいゝ」
○算盤
②なぎなた ③およぎ ⑥しつけがた
「なに、ばかをいへ、そろばんがいやしいものか。はかり事や人かずをわるときには、いくさのなかでなくてならぬものだ。二しんがいつし、ばち、  、  、  」
○柔術(やわら)
①きしや ④てつぼう ⑤きうじゆつ
「こんなすがたでやはらをとるところは、どうか女にはみせたくないもんだ。いやはや、ふためと見られぬかほばかりだ」
○躾方
④およぎ ⑤ぐんがく ⑥上り
「どうもたゝみのへりをふまぬやうにすると、おしるをゆすぶりこぼしてならぬ。はて、むまさうなにほひがするはい。一つ、おつま八郎兵へをやりたいな」
○鎗術
①きしや ③がくもん ⑥手ならひ
「なに、ばかをいへ、六しやくのうちで二けんのやりがつかへるものか。して、なにをつくのだ」
「まづだいゝち、うそをつくのさ」
「あきれるやつだな」
【六段目】
○手跡(てならひ)
①そろばん ④躾方 ⑥上り
「それ、手ならひはさかにくるまをおすごとく、ゆだんをするとあとへもどるぞ。あぁ、こうかゝねば、一しやうまうもくにうまれたもおなじことだ」
○剱術
①上り ③やわら ⑤そうじゆつ
「いま、たいへいの御代だから、このやうにけいこができる。せんぢやうとなつて、このやうにけいこをしてゐられるもんではない。やっとぉ、     」
○上り 御褒美
*本双六は武家子弟が嗜むべき学芸を題材にしている。本来の開始年齢では早い手跡が、上りの近くに配置されているのは、武士諸芸の中でも最も重視されていることを示唆するものであろう。すなわち、上がり両脇の「手跡」と「剱術」が文武両道の基本的教養とされたことを物語る。各項に付記された詞書台(詞のようなもの)はユーモラスで、楽しい遊びの中で武士の教養についての認識を促すものであっただろう。算盤が卑しいものでなく、武士子弟にも必要なことは既に、貝原益軒が『和俗童子訓』で主張したところだが、幕末
近くに刊行された本双六で説かれている点からすれば、算術的教養に対する偏見がいまだに存していたのであろう。
(小泉吉永氏翻刻)
遊び方「飛び双六」
・各枡目に記された台詞が、庶民の立場からユーモアと風刺を利かせた内容になっており、面白い。
・科目の中に打毬がはいっているのも注目される。明治以降すたれたが、八代将軍吉宗から幕末まで武術として盛んであった。

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