五雲亭 貞秀(歌川 貞秀)
麻疹養生伝〈はしかやうじやうでん〉
文久2年 (1862)
資料名1
麻疹養生伝〈はしかやうじやうでん〉
史料名1よみ
はしかようじょうでん
史料名Roma1
hashikayoujouden
絵師・著者名
五雲亭 貞秀(歌川 貞秀)
Creator
落款等備考
五雲亭 貞秀画
板元・製作者
大平
制作年和暦
文久2年
制作年西暦
1862
書誌解題
資料名1
麻疹養生伝〈はしかやうじやうでん〉
資料名2
史料名1よみ
はしかようじょうでん
史料名2よみ
史料名Roma1
hashikayoujouden
史料名Roma2
Title
Alternative title
シリーズ名・代表明細
麻疹養生伝
絵師・著者名
五雲亭 貞秀(歌川 貞秀)
絵師・著作者名よみ
さだひで  (ごうんてい さだひで/うたがわ さだひで)
Creator
管理No.
00001158
管理No.枝番号
000
落款等備考
五雲亭 貞秀画
板元・製作者
大平
彫摺師
制作年和暦
文久2年
制作年西暦
1862
制作年月
文久2年4月
書誌解題
判型・形態
大判2枚続
印章の有無
年月改 版元
印章内容
戌四改
複製フラグ
種別1
木版浮世絵
種別2
錦絵
種別3
麻疹絵 はしか絵
内容1
子ども絵
内容2
麻疹絵
内容3
母 子ども(幼児 少年) 男性 回り灯籠 熨斗
テーマ
「麻疹養生伝」とあり、麻疹・痘瘡(とうそう)【疱瘡(ほうそう)と同義語】にかかった際の養生法を中心に、予防のまじない、これら伝染病流行の歴史、病気になった際の食して良い物、悪い物まで記載し、注意をうながしている。当時伝染病の原因は不明であり、治療法も確立していなかったため、食事の善し悪しには問題もあり、またまじないにもたよっている。
具体物
左手前で狐の嫁入の回り灯籠を楽しんでいる兄弟が患者で、顔に赤い発疹が出ている。左には西洋風の薬缶(やかん)があり、文中に冷たい物は悪いとしてある。後ろの父は正座して、心静かに生花を楽しんでいるが、花は長寿によいとされる菊である。花器(銅製)も用意されている。右では姉と思われる女性が掛け蒲団にくるまって座り、草双紙を読んでいる。文には風に当たって冷やさないよう、また草双紙などを読んでたいくつしないようにと注意してある。女性の手前には熨斗をつけた見舞いの品が並んでおり、手前からはかんぴょう、菓子折、奥の紙袋は「かる焼」である。右の柱にある3文字はまじないの造語。
Comments
位置づけ
麻疹絵、痘瘡絵は数多く制作されているが、多くは荒唐無稽なまじない絵にすぎない。しかし、この作品は病気の流行した歴史や養生法をよく述べてあり、また絵も人気絵師貞秀だけに、養生する家族を写実的に描いてあり、特色ある麻疹絵になっている。

この作品の讃の内容はすべて、文政7(1824)年に重田貞一(十返舎一九)が著した書籍『麻疹養生伝』からの引用である。
讃・画中文字
<右> △□乙 此三字を書て 家のうちに貼りおけバ きハめてはしかかろし故に/ この画中にしるす 西國にてハ 昔よりこの符によりてこれ/ をまぬかれ 又ハかろくする事と云云/ 日本書記に曰く 敏達天皇四十年此症はじまり/ 上ハ百官下万民に至まで 死傷多しと云 或書に/ 痘瘡ハ聖武天皇天平七年はじめて流行し/ 麻疹は同九年にはじめてはゆる そののち/ 桓武帝延暦九年まで その間五十四めに/ して流行し 又二百十九年め長徳四年に流/ 行り また四百七十四年めにあたり 文明三年に/ 流行す 年数遥遠なれバ さだめて其内に 麻疹/ はゆるともしらず 病たる人多く有るべし 文明より三十七年め 永正/ 四年にまたおこなはれ そののち百四十四年め 慶安三年にはやり/ また四十二年めにして流行し 是元禄三年なり 又四十年め 享保/ 十五年め(ママ)にはやり 二十四年の後宝暦三年流行 また二十年目 安永/ 五年おこなハれ そのゝち二十八年め享和三年にはやり 凡天平より享和/ まで一千七十六年の間 数度の流行にして しかも生涯一度病て 二度病/ ことなきハ 一ツの異なり 享和より二十二年め天保七申年流行夫より/ 廿七年目にて 当戌年海内に流行す 食して宜しきもの/ 一 やき塩 一 かんぴやう 一 ほし大根 一 ゆりの根 一 にんじん 一 かたくり 一古みそづけ/ 一 上葛 一 くろ豆 一 氷こんにやく 一 越瓜 一 冬瓜 一 隠元豆 一 十六さゝげ/ 一 鹿角菜 一 小豆 一 やえなり 一 水飴 一 白雪羹 一 麩 酒はあし 一 鮑 酢具にてはあし

<左> 疱瘡 麻疹 水痘/ 人間一世(ママ)の大厄なれども 其かろきに至りてハ 服薬をも用ひずして/ 治する 其中に稍はげしく熱毒さかんに足腰たゝず 人事を失ひ/ 夢中の如くなるも有り 然れども養/ 生をよく 専らにする人ハ 第一食/ 物を用捨して おのづから全快に至る はじめ熱有と思ハゞ よく/ 風にあたらぬやう 蚊帳又ハ紙帳/ を用て 日中も其内に居るべく/ 冷かなるものを食せず 渇くとも水を/ 呑むこと大にわろし 白かゆ又は白湯/ 漬 寒晒の粉 道明寺の粉など 食す/ べし 大人ハ其心を得れども 幼稚ものハ/ わきまへもなく くるしきまゝに 夜着をふミぬき/ 手足を出し 冷るを かまハざるものなれバ 看病人/ よく/\心附て 介抱第一なり/ 食して悪しきもの 一 鳥類一切 一 玉子 百日いむ/ 一 青物油物ハ七十五日いむべし/ 一 豆腐 一 こんにやく 一 そら豆/ 一 竹の子 一 餅 一 梅ぼし/ 一 麺るい うんどんハよろし 一 梅漬/ 一 柿 一 菌(きのこ)るい 一 もミうり/ 一 茄子の生漬 百日いむべし/ 肥立かゝりて 怒ことを忌べし 又哀★すべて気をつかふ/ ★をまぎらせんと 雑談又ハ草双紙などよミて たいくつせぬことよろし/ 結髪月代を剃こと大ひにあし 廿日又ハ三十日も過ぎて ざつと洗足し/ 髪ハたばねておき 十日ほど見あハせ 其後沐浴髪月代してよろし

<特殊文字注> △=「範」の右下を「疑」の旁部に替える □=草かんむり(竹)と「厂」と「斬」を縦に重ねる ★=「古」と「又」を縦に重ねる(読み:こと)
自由記入欄
かる焼は米粉に砂糖を加えて焼いたせんべいで、軽くて消化が良く滋養があった。また、名称のかる焼が病気が軽くすむに掛かり、子どもの病気見舞いとして人気があった。公文蔵「麻疹養生弁」(芳虎)にも見られる。
右の女性は母ともとれるが、文中に患者は暖かくすること、草双紙など読んで過ごすことをすすめており、やはり病気になった姉かと思われる。
史料分類
絵画