歌川広重
娘諸芸出世双六
弘化頃 (1844-1848)
資料名1
娘諸芸出世双六
史料名1よみ
むすめしょげいしゅっせすごろく
史料名Roma1
musumeshogeishussesugoroku
絵師・著者名
歌川広重
Creator
落款等備考
板元・製作者
制作年和暦
弘化頃
制作年西暦
1844-1848
書誌解題
資料名1
娘諸芸出世双六
資料名2
史料名1よみ
むすめしょげいしゅっせすごろく
史料名2よみ
史料名Roma1
musumeshogeishussesugoroku
史料名Roma2
Title
Sugoroku Board Game: Accomplishments of Young Women in Various Arts
Alternative title
シリーズ名・代表明細
娘諸芸出世双六
絵師・著者名
歌川広重
絵師・著作者名よみ
ひろしげ   (うたがわ ひろしげ)
Creator
管理No.
00001232
管理No.枝番号
落款等備考
板元・製作者
彫摺師
制作年和暦
弘化頃
制作年西暦
1844-1848
制作年月
書誌解題
判型・形態
その他
印章の有無
印章内容
複製フラグ
種別1
木版浮世絵
種別2
錦絵
種別3
ゲーム
内容1
おもちゃ絵
内容2
ゲーム 女子の教育
内容3
双六
テーマ
「娘諸芸出世双六」と題された通り、出世を願う娘が身につけるべき芸事を
紹介するとともに、諸芸を学んだ娘が御殿に上り、貴人に仕えて出世するまでを
扱っており、人生ゲーム双六でもある。
具体物
「ふりだし」は全ての学芸の基礎である手習いで、「上り」は御殿の奥方が描かれている。
その左右の枡目には「御年寄」「御中老」が描かれており、ここが大奥での出世の最上位と
なる。他に「御妾」にはなれるが、奥方は由緒ある家柄の出でないとむつかしい。
登場する諸芸を分類すると、音曲に類するものが、唄三味線、踊り、義太夫、浄瑠璃
囃子、胡弓、琴と多い。音曲以外の遊芸では、生花、香、茶の湯があり、文芸では
和歌、俳詣、書画、盆画がある。さらに諸札や武芸もある。身の振り方では、永のお暇
縁附、宿下り、慶庵がある。武家奉公は、御目見得、部屋子、御祐筆、御髪上、御次
御茶の間、呉服の間、御小姓、御側と進む。
Comments
位置づけ
けいこ事の双六であるとともに女子の出世双六でもある。江戸後期になると
女子も手習いだけでなく諸芸に励み、武家奉公に上ってその芸をさらに
磨くことが、出世の道とされた。武家奉公を終えると、裕福な町家から
嫁入りの口が待っていたとされ、そのような娘事情を反映した双六である。
讃・画中文字
娘諸芸出世雙六
*「ふりだし」と「上り」を除き、最下段右下から最上段左上までの順に翻字。
【一段目】
娘諸芸出世雙六
ふりだし
広重画
○てならい子(手習い子)
(一)おどりこ(踊り子)
(二)三みせん(三味線)
(三)ぜうるり(浄瑠璃)
(四)ぶげい(武芸)
(五)しよぐわ(書画)
(六)こと(琴)
○唄・三味線
(四)こと
(五)こきう(鼓弓)
(六)はやし(囃子)
○おどり(踊り)
(一)三味せん
(二)ぼんゑ(盆画)
(三)おめみへ(御目見得)
○永(なが)のおいとま(お暇)
(二)ゑん付(縁付)
(四)けいあん(慶庵)
★さいきんしゆ?
(六)おそば(お側)
○ゑん附
この所、身のおさまりゆへ、もはや外へ出ることなし。
山泉堂 山城屋甚兵衛板

【二段目】
○義太夫
(一)いけばな(生花)
(二)茶のゆ
(三)けいあん
○浄瑠理(璃)
(二)こと
(四)上り
(六)けいあん
○はやし
(一)けいあん
(二)へやご(部屋子)
(三)さみせん
○やどさがり
(四)おちうろう(御中老)
しんるいのちぎりで
(五)浄るり
ゑんだん(縁談)ができて
(六)永のおいとま
○諸礼
(四)ぶげい
(五)こきう
(六)へやご
○けゐあん
(一)おめみへ
(二)おめかけ(御妾)
(三)おつぎ(御次)
★御奉公人口??

【三段目】
○武げゐ
(二)おめみへ
(四)わか(和歌)
★げいがすぐれて、おどりして、すぐに
(六)おそば
○いけばな
(一)はいかい
(三)こきう
(五)おめみへ
○こきう
(一)へやご
(二)おめみへ
(三)こと
○こと
(四)おめみへ
(五)けいあん
(六)こう(香)
○香
(一)おちやの間(御茶の間)
(二)おめみへ
(三)はいかい
○茶のゆ
(四)おめみへ
(五)いけばな
(六)ぶげい

【四段目】
○和歌
(一)けいあん
(二)おめみへ
(三)しよぐわ(書画)
○はいかい(俳諧)
(四)かう
(五)しよ礼
(六)おめみへ
○お目見へ
(一)ごふくの間
(二)おつぎ
(三)ごゆふひつ(御右筆)
(四)おちやのま
(五)おめかけ
○へやご
(二)おこせう(御小姓)
(四)おそば
(六)おつぎ
○書画
(一)おめみへ
(三)はいかい
(五)ごゆうひつ
○ぼん画
(四)けいあん
(五)おめみへ
(六)しよ礼

【五段目】
○御祐筆
(一)おそば
(二)おつぎ
(三)宿下り
○おぐしあげ(御髪上げ)
(四)おそば
(五)おいとま
(六)宿下り
○おつぎ
(二)おぐし上げ
(三)おそば
(四)宿下り
○お茶の間
(三)おつぎ
(四)おそば
(五)宿さがり
○ごふくの間
(一)おぐしあげ
(三)おそば
(五)宿下り
○御小性(姓)(おこせう)
おてがつきて
(二)おめかけ
(四)おそば
(六)宿下り

【六段目】
○おめかけ
(一)永のおいとま
(三)ゑん付
★いとまがでゝ□□□
(五)お目みへ
○御中老(おちうろう)
(一)ゑんづき
(二)上り
(四)おとしより
(六)やどさがり
○おとしより
(一)上り
しゆびよく(首尾良く)
(二)おいとま
(三)やどさがり
○おそば
(四)おとしより
(五)おちうろふ
(六)やどさがり
○上り・御てん

*諸芸を学んだ娘が貴人の奉公人になるという一種の人生ゲームに近いが、逆に言えば、出世のために諸芸修行を求められていたことも思わせる。女子用往来等では、琴・和歌・書画等は女性の諸芸の定番としてしばしば紹介され、生花・茶の湯も徐々に採り入れられていくが、浄瑠璃・三味線等低俗な芸として位置付けられるのが常である。さらに、本双六では諸芸の中に「武芸」が含まれている点は興味深いが、同箇所で「芸が優れて」いきなり貴人に伺候する女中へと出世するコース
が用意されているように、一芸を極めることの意義も暗に説く。また、「縁付」で嫁入りした女性が「もはや外へ出ることなし」とするのも、「貞女二夫にまみえず」という儒教道徳的建前に基づいており、いかにも教科書的である。いずれにしても、女中奉公をする際に必要な諸芸の数々と、奉公人(女中)の種類を示した教育双六である。

智 道しある世に生れなはをのつから
ひとつをしらは十をしらなん
(道しある世に生まれなばおのずから
一つを知らば十を知らなん)
*手習双紙は黒くなっても何度も練習に使用した。乾いてさえいれば、水で濡れた筆跡がはっきりと分かるからである。使用済みの手習双紙を用いている点からすれば、筆に水を染み込ませて練習しているのであろう。ちなみに手本(折手本)には「此ほと(程)はゆる と」で始まる女文が認められている。
(小泉吉永氏翻刻)
自由記入欄
遊び方「飛び双六」
・慶庵とは奉公紹介業のこと。
・各枡目の上部には青・黄・紅の色を松皮菱で区切ってふせてある。
・同じ広重の「稽古出情振分双六」と同類の双六。
史料分類
絵画