メインテーマは戊辰戦争の進展の様子であり、新政府と旧幕府軍の戦いぶりである。しかし、幕末の子ども遊びに場面を置きかえてあり、当時の子どもたちの遊びや風俗を解明する貴重な絵画史料でもある。ここでは、子ども絵としての解読を中心に行い、風刺絵としての解説はおさえ、参考文献A、Bの作品番号ないし頁数を上げておく。

「竹馬尽し」とあるが、ここには2本の竹竿に足をつけて乗る高足と、赤貝に手綱をつけて歩む赤貝馬だけで、葉のついた竹にまたがって遊ぶ春駒とも呼ばれる竹馬は登場してない。絵の中央で、竹馬を槍がわりに戦っているのが、長州（萩）と会津（そうそく）であり、後方で女性（天璋院）に手をとられて旗（錦の御旗）を持った幼児（明治天皇）が左（幕府方）へ連れていかれそうで、薩摩（十文字）があわてて追いかけえいる。左端では、ここでも慶喜（一の字つなぎ）が竹馬をかついで逃げようとしている。中央手前で、輪つなぎ文の子が赤貝馬に乗っている。

慶応4年（戊辰）正月の鳥羽・伏見の戦に始まる戊辰戦争に関しては、多くの風刺画が出版されて人気を呼んだ。なかでも、新政府軍と旧幕府軍の戦いを、子ども遊びに見立てた「子ども遊び風刺絵」が目立つ。従来、風刺内容を中心に研究されてきたので、ここでは子どもの遊び及び風俗の観点から解読を進める。

「幕末の風刺画」1995年、町田市立博物館図録　第95集　A
「幕末維新の風刺画」南和男著、吉川弘文館　1995年刊　B
Aの図35
「子ども遊風刺絵」⑥（春）