No.11
藤澤紫先生浮世絵と遊ぼう
日本初の動物園!

大きなおりの中に、たくさんの鳥がいますね! 洋風の赤い帽子と革靴でおしゃれをした男の子が、めずらしそうに見あげています。子どもをおぶったお母さんと、振り袖のお姉さんもいっしょです。明治時代の仲良し家族がおとずれた、人気のスポット。ここはどこでしょう?

ヒントは「日本初の動物園」。そう、東京都台東区の上野動物園です。上野公園にオープンした博物館の付属施設として、明治15(1882)年3月に開園しました。初めは日本にほん産の身近な生き物が中心でしたが、めずらしい海外の動物も増え、さまざまな生き物とふれ合える施設になったのです。

男の子の目線の先には、ひらがなで、「ふくろ」と書かれた看板が。この鳥はフクロウだったのですね。実は、この浮世絵のタイトルの「福つくし」は、幸福のシンボルを集めた作品という意味。「ふく」の字をふくむフクロウを描いたのは、ことば遊び、つまりだじゃれなのです。

左おくのおりの中には、頭のてっぺんが赤いタンチョウヅル、その上を飛ぶのはタカでしょうか。背景には花ざかりの桜も見えます。春のおとずれとともに、みなさんも動物とふれ合ってみてはいかがでしょうか。

明治時代の上野動物園

あずま風俗 福つくし  ふくろ(楊洲周延ようしゅうちかのぶ)明治22年(1889)

大人向け解説

文明開化の雰囲気も伝える

今回はタイトルに注目です。浮世絵版画には、絵師名や版元名、シリーズ名などのさまざまな文字が書き込まれています。中でもタイトルは、主題を知るための重要な情報源です。
この作品の右うえにも、カラフルな題が付されています。よく見ると「HUKURO」とありますが、これはサブタイトルの「ふくろ」をローマ字表記したもの。英語教育が進む明治の世相を反映しているのでしょう。登場人物も、それぞれ帽子や靴、洋傘など、文明開化を象徴する小物をすてきに使いこなしています。
明治半ばになっても、メディアとして重宝されていた浮世絵。こんなふうに、人々に最新の文化を届けていたのですね。