No.13
藤澤紫先生浮世絵と遊ぼう
レッツトライ! たたむと変身?

ていねいにほった版木を、何度もすり重ねて完成する浮世絵うきよえ版画。かつては江戸えどっ子たちの娯楽品ごらくひんでしたが、カラフルでユニークなデザインが愛され、ファンは海外にも広がっています。中には切る、貼る、折るなどで工作する「遊べる浮世絵」もあるのです。今回はその一つ、「おりかわり絵」をご紹介します。

このコミカルな絵は、大きな版画の一部を切り取ったもの。右から、だるまさん、ねこ、子どもですが、どうやって遊ぶのでしょう? 「とふ(う)なす」「ふで」「するめ」と書いてあり、これがヒントです。実は折りたたむと絵が変わる「変身」グッズなのです。

ポイントは、絵の上下にある短い線。これらが重なるようにふたつ折りにしてみましょう。すると、だるまさんが「かぼちゃ=唐茄子とうなす=」、ねこが「筆」、そして子どもが「スルメ」に早変わり。おもしろい仕組みですね。

捨てられてしまうことも多いおもちゃ絵ですが、公文くもんのコレクションには貴重な作例が多くふくまれています。昔のものから新しいことを知る「温故知新おんこちしん」という言葉の通り、遊びの先輩せんぱいたちの発想には、私たちもおどろかされますね。

折りたたむと絵が変わるおもちゃ絵

此中このなかはおもしろきもの(歌川芳藤)慶応頃(1865-68頃)

大人向け解説

和紙のちから

色鮮やかで、眺めるだけでも楽しい「おもちゃ絵」。江戸時代には手遊び絵とも呼ばれ、かの北斎や本図の作者芳藤ほか、名だたる浮世絵師が描いています。
それらを支えたのは、彫りりのたくみの手業と「和紙」の力です。紙衣かみこという紙製の衣装もあるほどの強度。やんちゃな子どもの遊び道具にも、ぴったりの素材ですね。
貴重品だった和紙も江戸時代には庶民に広がり、出版文化の隆盛のきっかけになりました。17世紀のオランダの画家レンブラントも、柔らかく強い和紙を好んで版画に用いたと言われます。
ユネスコの無形文化遺産にも登録された手すき和紙、「紙文化」を享受した昔の子どもが、何だかうらやましいですね。