No.26
藤澤紫先生浮世絵と遊ぼう
読書の楽しみ

おうちでゆったりと過ごす時、みなさんは何をしているでしょうか。

今回ご紹介するのは、なかよく学ぶ、明治時代の三姉妹を描いた作品です。幸運をイメージする「ふく」がつく言葉にしゃれを加えた、楽しくてえんぎの良い絵です。

サブタイトルの「ふくどく(複読ふくどく)」とは、本をくり返し読むこと。ほら、手前の少女がいっしょうけんめいに本を読んでいますよ。細い棒で文字をたどり、音読しています。何度も練習しているのでしょう。右のお姉さんが、「その調子、上手ね」とはげましています。さらに後ろには、順番を待つすえのむすめまで。「私はもっと大きな声で読めるもん!」と、やる気に満ちた表情です。

たなにはおしゃれな時計や、たくさんの洋風の本。当時はぜいたく品であった品々に囲まれ、「幸福ななかよし姉妹」といった様子です。「HUKUDoku(ふくどく)」のローマ字にも、西洋文化を柔軟に受けとめる、明治の人々の姿勢を感じます。

私が勤務する大学でも、インターネットを用いた授業を行っており、日々、新しい学び方にチャレンジしています。家族みんなとおうちで過ごす大切な時間。声を出して本を読み、大切な人に聞かせてあげるなど、楽しい学び方を探してみませんか。

明治時代の三姉妹

あずま風俗 福つくし ふくどく(楊洲周延ようしゅうちかのぶ)明治22年

大人向け解説

おしゃれな浮世絵

本図は、明治期に活躍した楊洲周延ようしゅうちかのぶ(1838~1912)の人気シリーズの一枚。越後の武家の子である周延ちかのぶは、ひんの良い女性を描き一世を風靡します。

おしゃれな美人画には女性ファンも多く、この三姉妹も当時の理想と言えるでしょう。姉の着物は矢絣模様、次女は市松風、末っ子は愛らしい「ふくら雀」。髪のかんざしも、しっかりものの姉やおしゃまな末っ子には華やかで大振りなものを、真面目な次女には清楚な花をと描き分けているようです。

「福」を描くこのシリーズで一貫しているのは「豊かさ」。それも、暮らしぶりのみならず、家族や人との交流に焦点を当てた「心の豊かさ」です。本当の「福」は、物よりも人の心の中にある。私たちも大切にしたい思いですね。