No.30
藤澤紫先生浮世絵と遊ぼう
あこがれの遊園地

みなさん、遊園地や動物園は好きですか。楽しい遊具やかわいい動物と会える人気のスポットは、明治時代にも大人気でした。この少女らがいる場所もその一つ。今も東京にある遊園地ですが、いったいどこでしょう?

その名は「浅草花やしき」、日本にほん最初の遊園地とも言われ、開園は江戸えど時代末の嘉永かえい6(1853)年。浅草寺せんそうじの近くにあり、はじめは季節の花々を楽しむ花園かえんでした。明治期には遊具のほか、ある施設しせつも置かれて評判になりました。

2人ふたりがながめているのは、サル、トラ、ゾウなど、いずれも動物園にいる生き物です。実はこの5年ほど前、明治36(1903)年に大阪で開催かいさいした「第5回内国勧業かんぎょう博覧会」に出展されためずらしい動物を買い受けて、展示するようになったのです。まさに「遊園地」と「動物園」が合体した、人気のアミューズメントスポットです。

この2人ふたりもお出かけ用のおしゃれをしています。長いかみに色ちがいの大きなリボンを結び、少しモダンなふんいきです。ふっくらとした顔に赤いくちびる、よく似た顔立ちで、仲良しの姉妹なのでしょう。動物に囲まれて本当に楽しそう。今と変わらぬ、明治の子どもたちのときめきが伝わってきます。

日本にほん最初の遊園地

いますがた 花やしき(山本昇雲しょううん)明治42年(1909)

大人向け解説

近代版画の超絶技巧!

作者の山本昇雲しょううん(1870~1965年)は本名・山本茂三郎、明治から大正にかけて、雑誌の表紙や挿絵などの分野で活躍しました。明治時代の後半には、江戸情緒を感じさせる美人画や、元気な子どもを描いた木版画を発表しています。
この「いますがた」は明治39~42(1906~09)年にかけて、版元大黒屋平吉から出た連作です。当時の先端の女性像を魅力的に描いています。江戸時代後期以降、浮世絵では「歌川派」の流れをくむ絵師が人気でしたが、昇雲しょううんは彼らとは異なる優しくひんのある画風で、高い評価を得ました。
本図は上半身を拡大したおお首絵形式を取り、女性の豊かな表情に焦点を当てています。彫師、すり師の技術も高く、髪の毛の繊細な線や、動物に用いたぼかしの技法など、見応えがあります。まさに明治の超絶技巧と言えるでしょう。