No.37
藤澤紫先生浮世絵と遊ぼう
浮世絵ヒーローズの登場!

「浮世絵」は、江戸から明治にかけて大流行した絵画です。特に木版で刷られたカラフルな版画は世界中で愛され、大人も子どもも夢中になる、楽しい情報がいっぱいです。

浮世絵には、当時の流行が描かれています。芸能人や最新ファッションのほか、人気のヒーローやヒロインも。

この絵にも、元気な男の子が描かれています。真っ赤な体に大きな目が印象的なこの子は、ある昔話の主人公です。さて、だれでしょう?

答えは、金太郎。クマとすもうを取ったお話が有名です。強くて元気な金太郎は、子どもたちのあこがれのヒーロー。木登りする金太郎を優しく見守っているのは、お母さんです。

よく見ると、くっきりした目鼻立ちや、筋肉のある体の描き方は、私たちが知っている「金太郎」とはちょっと変わっているようです。これは当時進んでいた西洋絵画の影響なのです。浮世絵師は、今のイラストレーターやまんが家のような仕事もしていました。この絵をえがいた歌川国芳は西洋画のテクニックを取り入れ、新しい作品を作り上げました。元気なヒーローを描くのがうまく、とても人気がありました。

じょうぶで力持ちの金太郎のように、みなさんも元気にすごしてくださいね。

木登りする金太郎

和漢なぞらえ源氏げんじ 山姥 會童丸かいどうまる 須磨(歌川国芳)安政2年(1855) 

大人向け解説

世界に羽ばたく浮世絵

いまや日本を代表する絵画の一ジャンルともなった浮世絵。豊かなデザイン性と、高い彫摺ほりすりの技術も相まって19世紀後半には、欧米でジャポニスムが流行するきっかけを作りました。
この絵を描いた歌川国芳が影響を受けた葛飾北斎は、とりわけ海外でも人気が高く、米国のフォトジャーナル誌「LIFE」が1998年に発表した、「この千年せんねんで最も重要な功績を残した世界の人物百人」に日本人として、また画家として唯一選ばれました。
パスポートにも北斎の「冨嶽ふがく三十六景ろっけい」が採用されています。実は国芳と同様、北斎も海外の文化を積極的に取り入れた絵師の一人ひとりです。日本の伝統的な画法に、海外文化を柔軟に取り入れたからこそ、世界で親しまれ、愛され続けているのかもしれません。