
色とりどりの折り紙や色紙、みなさんも集めているのでは? 今回は江戸や明治の子どもたちもチャレンジした、家の中でも楽しめる、紋切り遊びを紹介します。
絵をじっくりと見てください。たくさんの正方形の中に、カラフルな12個の図が描かれています。実は、浮世絵師が手がけた、切り紙のための「型紙」。これを使えば、家紋のような美しい切り絵が簡単にできます。
上部には完成作の小さな見本と、それぞれの名前。桜や梅といった花もようや、チョウチョなどの昆虫も。その中でも、おめでたい「つる」を作ってみましょう。
上から3段目の左はしの図をはさみで切り取ります。小さすぎたら、家の色紙に絵を大きく写してやってみてください。次に、図が見えるように下へ重ねて、線にそって紙を六つに折ります。絵にそって、白い部分をていねいに切り落し、ゆっくり紙を開くと、見本のような3羽のツルの紋の完成です!
難しく見えるデザインも、実は単純な文様のくり返しでできています。図形にもくわしくなれる紋切り遊びは、江戸や明治時代の教育にも役立ちました。遊びと学びを同時に体験できる、すぐれものの手作りキット。家族といっしょに楽しんでみてはいかがでしょうか。

幼稚園用切紙 第拾号(歌川国鶴)明治頃(1868-1912頃)

大人向け解説
「紋切り型」のオリジン
私たちが普段、何気なく用いている言葉には、さまざまな成り立ちや意味があります。今回の浮世絵とも関わりの深い「紋切り型」も、時代と共に意味合いが変化した例の一つです。
よく「紋切り型のあいさつ」などと言いますが、本来は文字通り、紋を切り抜くための型の意でした。それが次第に、「型にはまった」やり方や「決まりきった」出来事などを指すようになりました。
近年改めて注目され、出版物などにも取り上げられるようになった紋切り遊び。こちらは「型にはまる」どころか、実にバリエーションが豊かです。極限まで図案を単純化し、そこから多様なデザインを生みだす技法や豊かな発想は、日本の優れた意匠文化を体現しています。