
テレビやコミックスのヒーローたちは、しばしば変身し、大活やくをします。この浮世絵にも、変身する、歴史上の英雄たちが登場します。切り取って「変身ごっこ」をしてみませんか?
本図は「折り変わり絵」と呼ばれるもので、子どものおもちゃとして愛されました。遊び方は簡単です。右から順に線を山折り、谷折りにして、小さく折りたたみます。
それぞれの絵にヒントがあり、上段右上には「とそ包のかたち ひらけば加藤清正」と書かれています。正月に飲むおとそ用の真っ赤な「とそ袋」、開けば、肥後国(熊本県)大名の加藤清正公に大変身!
上段中央には「おりづるのかたち ひらけば楠木正成」とあり、きれいな折りづるを開くと、鎌倉時代の武将、楠木正成像に早変わりします。
上段左、「なすのかたち ひらけば巴御前」と書かれたナスの絵を開くと、有名な女性の武将、巴御前の勇姿が現れます。
下段にも、右から順に「こまのかたち ひらけば関白秀吉」、「シヤツホ(ぼうしのこと)のかたち ひらけば金時」、「れいしのかたち ひらけば武田信玄」とあります。何に変身するのか、想像する力が試されますね。
自分流の折り変わり絵を作り、みんなで当てっこをすると、いっそう楽しめそう。ぜひトライしてくださいね。

新板武者の折かわり絵(邦年)明治期

大人向け解説
大人もワクワク
人気絵師のおもちゃ絵には、購入者をひきつけるためのさまざまな工夫が見られます。本図のような「折り変わり絵」にも、完成図を想像する楽しみがあります。
優れたおもちゃ絵は、デザイン性はもちろんのことレイアウトにも無駄がなく、一枚でたっぷり遊べるよう、紙面いっぱいに絵を描きます。実は本図の下にもさらに12図が配されています。
「ほふづきのかたち ひらけば平清盛」「けまりのかたち ひらけば平重盛」「ほふしの玉のかたち ひらけばよしつね」「うちはのかたち ひらけば朝比奈三良」「ホッスのかたち ひらけば頼光鬼の首」「おりかめのかたち ひらけばべんけい」とあり、魅力的な図柄ばかりです。
変化する図像を想像し、店先で商品を選ぶ子どもたち。その姿を想像すると、私たちの胸もワクワクしますね。