No.10

子どもはお宝!
豪華な船に乗った元気な子どもたちと、やさしく見守るお姉さんとお母さん。幸せがぎゅっとつまった、楽しい浮世絵です。男の子が5人、女の子が2人。どうやら、新春にふさわしい「何か」に扮しているようです。
おめでたいものが大好きな江戸っ子は、人気の高い福の神を集めた「七福神」をまつりました。特に宝船に乗る七福神の絵は縁起が良いとされます。
右から、お姉さんにだかれた子は、如意棒を持っているので寿老人、琵琶をひく女の子は弁才天、宝もようの振袖の子は吉祥天のようです。真ん中には鯛をかかえた恵比寿、兜代わりのざるをかぶった毘沙門天、大きなふくろがトレードマークの布袋役の子もいますね。船の手前には帽子をかぶった小さな大黒天、お母さんのお乳でおなかがいっぱい。ほほえましいですね。
七福神宝船の絵をしいてねむると、良い初夢が見られるとも。まくらの下にこの絵を置いて、「今夜、良い夢が見られますように」とお願いしてみるのもすてきですね。

七福神に扮した子どもたち
風流子宝船(喜多川歌麿)文化2年(1805)

大人向け解説
規制の中で新境地に
浮世絵の黄金期を飾る絵師、喜多川歌麿(1753~1806年=生年には諸説あり=)。この作品は署名から、文化2(1805)年正月向けの商品と分かります。まさに、歌麿最晩年の傑作です。
実は、歌麿が活躍した寛政年間には、出版物の表現や価格などを制限する法令が幾つも出されました。浮世絵にもその影響は及び、評判の美女を名前入りで描くことなども難しくなります。
そのような中、歌麿はかねてより手掛けていた「母と子」や「兄弟、姉妹」という身近なモデルに向き合い、たくさんの作品を生み出しました。家庭の平安を願う歌麿のこれらの名品は、移ろう時代に柔軟に対応しながら生み出されたのです。