参考論考・参考文献


参考文献
「くもん子ども浮世絵コレクション」を研究する上で欠かすことのできない、事典類や資料集といった「調べるための参考資料」を中心にご紹介します。これらの資料が、浮世絵や江戸子ども文化に関心をお持ちのみなさまの理解を深める一助となることを願っています。
浮世絵を調べるための事典・資料集
ここで取り上げるのは、特に浮世絵の書誌的な情報を得るための索引として有用な資料です。
国際浮世絵学会『浮世絵大辞典』 (東京堂出版 2008)
絵師をはじめとした浮世絵に関わる人物や、浮世絵制作や出版に関わる用語など、浮世絵に関することがらを網羅した辞典。浮世絵について深く知りたい方には、巻末の「浮世絵に関する主要文献」が参考となるでしょう。
日本浮世絵協会『原色浮世絵大百科事典』 (大修館 1981)
浮世絵の概説、浮世絵の解読に必要な改印や版元印の一覧、絵師や画題別の解説などを、画像をふんだん用いて解説した、全11巻に及ぶ大百科事典。
『錦絵の改印の考証』(石井研堂著、鈴木重三・木村八重子補記・補注、芸艸堂 1994)
浮世絵の製作年代を特定する上で欠かすことのできない、浮世絵の出版検閲の改印を収集整理した資料。本書の初出は1920年。本書刊行以降に判明した改印についての研究は、『浮世絵大辞典』の「改印一覧」を参照のこと。
『錦絵の彫と摺』(石井研堂著、山下恒夫解説、芸艸堂 2005)
浮世絵の制作に必要な版木や紙、顔料といった材料から、彫りや摺りの道具、技法などをまとめた資料。初出は1929年。
江戸の地理・出来事・風俗を調べるための基本文献
浮世絵には、実際に起こった出来事や行事、実在の場所や人物が描かれています。以下のような資料と浮世絵に描かれていることを突き合わせることで、その作品の詳細やその背景などが見えてくるのです。これらの資料は初版が刊行されてから現在に至るまで、さまざまな形で再販されているものが多いため、著者名と資料名のみ記します。
斎藤月岑『武江年表』
天正18年(1590年)から明治6年(1873年)までの、江戸における出来事が編年でまとめられている資料。
斎藤月岑『東都歳時記』
江戸で行われていた年中行事や風習などが、1月から12月まで順に整理されている資料。
菊池喜一郎『絵本江戸風俗往来』
趣旨は『東都歳時記』に同じだが、著者は四代広重を称した絵師であり、年中行事や生活の雑事をふんだんな図版と共に紹介している。
斎藤月岑、長谷川雪旦『江戸名所図会』
江戸中の地名や神社仏閣、名所等が事細かに記録されている資料。
喜田川守貞『類聚近世風俗志』(別名:守貞謾稿)
江戸時代後期の江戸・京都・大阪における、ありとあらゆる風俗-服装から食事、仕事、遊びなど-を多くの図版と共に収めた大著。
<番外編>江戸切絵図
切絵図(もしくは切図)は、江戸時代から明治時代にかけて作られた市街地の住宅地図のようなもので、様々な版が存在します。浮世絵は実際の地理や風景をモチーフに描かれることが多いため、描かれた場所の特定に役に立ちます。国立国会図書館デジタルコレクションでは、幕末に作られた代表的な切絵図である「尾張屋版」が江戸全域分公開されています。
江戸時代の遊びやおもちゃを調べるため基礎文献
『江戸時代 子ども遊び大辞典』(小林忠監修、中城正堯編著、東京堂出版 2014)
「遊び」は子ども文化を考える上で、とても重要なテーマです。くもん子ども浮世絵コレクションの生みの親ともいえる中城正堯氏(元くもん出版社長・くもん子ども研究所顧問)がまとめた『江戸時代 子ども遊び大辞典』(東京堂出版、2014)は、くもん子ども浮世絵コレクションをはじめとしたさまざまな史料で確認できる江戸時代の遊びを、多数の図版と共に収集・整理した労作で、文字通り『江戸時代の子ども遊び』辞典の決定版です。
『江戸二色』(北尾重正著)
浮世絵師である北尾重正が刊行した『江戸二色』には、当時の玩具88種類が紹介されています。ただし『江戸二色』が刊行されたのは安永2年(1773)であり、江戸時代後期の約100年間をカバーしていないことに注意が必要です。
立命館大学アート・リサーチ・センターの古典籍ポータルデータベースで検索をすると、インターネット上で公開されている資料画像を閲覧することができます。
https://www.dh-jac.net/db1/books/search_portal.php?lang=ja
『うなゐの友』(清水清風、西沢笛畝画)
玩具博士とよばれた清水清風が全国各地の伝承玩具や人形を描いた木版画集。清風は明治23年(1891)以降6編まで刊行。彼の死後、画家の西沢笛畝が継いで、大正13年(1924)に10編まで刊行し、完結した。近世玩具研究の基礎文献。
ここから選択収録をした『日本のおもちゃ 玩具絵本「うなゐの友」より』(芸艸堂 2009)は入手しやすいでしょう。
『人魚洞文庫データベース』(川崎巨泉画、大阪府立中之島図書館蔵)
川崎巨泉は大阪・堺に生まれた画家。明治後半から郷土玩具に興味を抱きはじめ、郷土玩具を描くようになります。死後、遺族から寄贈された自筆写生画帳116冊に描かれた全作品の画像が、「人魚洞文庫データベース」として公開されています。
https://www.library.pref.osaka.jp/site/oec/ningyodou-index.html